ろまんてぃっく同盟


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ずっと前、ホリちゃんがうちの本棚から1冊の本を持っていった。
実はもともとその本は、それよりもっと前にわたしがチカちゃんの本棚から借りてきたままになっていたものだったので、持ち主であるチカちゃんにこのままホリちゃんに貸してもいいかと聞くと、その本はあの時貸したんじゃなくてあげたんじゃん、だからもう同じの持ってるよ、なんていう感動的な答えが返ってきたので、わたしはチカちゃんのスマートさにも、同じ本を三人で共有できることにも感謝しながらホリちゃんに堂々とこの本を差し出した。

くわえて当時のわたしはこの本にちょっとした思い入れがあり、その小さな思いも一緒にホリちゃんに預けるというか委ねるというか(ホリちゃんもそれを知っていて持っていった)、そういうことで自分の中の一部が救われるような思いがあった。

本棚からこの本が消えた数年後にわたしは結婚し、新しくしたふたりぶんの本棚の中には再びこの本があった。
結婚!
二人でひとつが結婚なら、三人でひとつはやはりロマンティックなのだ。

再び時間を経て、わたしが東京を離れる数日前、三人で恵比寿のベトナム料理屋で海老を食べていたら、ずっと持っててごめんと言ってホリちゃんはこの本を鞄から取り出した。
うちにはあるから持っててと言うと、ホリちゃんは、良かった、実は新しく買おうかと思ってたの、と大事そうにまたそれを受け取り、チカちゃんはかつての自分の本を前にして、同じなのに懐かしいと言った。

それからホリちゃんは、ずっと借りていたお礼にと小さな包みをくれた。
開けてみると野田琺瑯のバターウォーマーが入っていた。
この小さなバターウォーマーを実はわたしは既にひとつ持っていたのだけど、なんとなくそれを言いそびれてしまい、後になってから、どうしてそのときにチカちゃんにバターウォーマーを渡さなかったんだろうとひどく後悔した。

だって三人の手元には今同じ本があるけれど、ホリちゃんの本棚にあるそれは、10年前はチカちゃんの本棚にあったのだ。
わたしもホリちゃんもこの本を一度も買わなかったけど、チカちゃんは2度求めた。
バターウォーマーがふたつあるならば、そのひとつは間違いなくチカちゃんのものだろう。

箱に入れたままのその新しいバターウォーマーをチカちゃんにあげれば、話はずっとロマンティックになるはずだ。
そうして、もうひとつ、わたしが新しく買って、それをホリちゃんに贈ろう。そうしよう。
なんでって、ろまんてぃっく同盟だから!




ホリちゃんがうちの本棚からこの本を持って行った頃のこと。
あるワークショップが終わり、スタッフの打ち上げの席でホリちゃんとわたしは中島らもの至純な愛とロマンとそのスピリットについてものすごく熱くなっていた。
いつの間にか銀縁眼鏡で真っ黒い髪がもしゃもしゃの女の子が真ん前に座っていて、興奮状態のわたしたちを細めた目で意地悪く眺め回しながら、ヒステリックでしつけの悪い九官鳥みたいな無遠慮さで「きもちわるい男!ロマンってどこが?それに今どきロマンティックな男なんてはやんないはやんない。寒いだけ」と言った。
その物言いが全く顔に似合わずやけに色っぽかったので、瞬時に頭に血が上り、彼女に向かって「ちょっと!」と叫ぼうとした時、ホリちゃんは咳払いのかわりにテーブルをこつんと叩いて「悪いけど」と言った。

「悪いけど。私もあずさもロマンを糧に生きてるの」
ホリちゃんが彼女を見つめ優しくそういったとき、わたしの中の記憶が勝手にそうしているのか、とにかく、周りが一瞬だけ静まってみんなホリちゃんを振り返り、チカちゃんは離れたテーブルでワオ!という表情をしていた。
わたしたちは再び中島らもの至純な愛とロマンとそのスピリットについて熱くなり、髪の毛もしゃ子はもちろん席を離れ、他の人々もそれぞれの話題に戻っていった。

ホリちゃんかっこいい!
っていうんで、それから、もうずっとわたしたちはろまんてぃっく同盟。
日々ロマンを求めて、泣いたりわめいたり唇を噛んだりしておるのであります。
ロマンを感じない人生なんて!

心の中で、これに勝手に加盟させている友人たちもいて、そういう人々と話すことをこっそり、ろまんてぃっく会議と呼んでいる。

思い当たる節があるあなたはすでに、ろまんてぃっく同盟の一員ですよ。
(たとえば、宇宙やら、桜やら、落ち葉に囲まれた家やら、外国のチョコレートやらについて、わたしたちは話をしたことがあるでしょう?)
by azdrum | 2007-11-24 21:00 | ひとびと | Trackback | Comments(8)
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Commented by ブンブン at 2007-11-25 22:58 x
>ヒステリックでしつけの悪い九官鳥みたいな
あはは!そういう人っていますよね。面白い表現だな。
その女の子はまだ子供だったのでしょう。こういう子が実はロマンスに溺れやすいのです。いつかその時が来たら、髪の毛にストパーをかけるかもしれませんね。

昔、大切にしていた電卓がめぐりめぐって好きな人に使われていた事がありました。しかもなくさないように書いた私の名前のシールの上にわざわざマジックでその人の名前が書いてありました。ドロボー相手なのに、すごくときめいてしまった事があります…。
Commented by kasumix at 2007-11-26 02:24
いい話ですね。ろまんてぃっく同盟…
ロマンは人の心を豊にするものですよねん。
チカちゃん、ホリちゃんとのろまんてぃっく同盟が、いつまでも続きますように。
そしてまた、ろまんてぃっく会議の模様なども聞かせてくださいませ
Commented by azdrum at 2007-11-26 21:04
>ブンブンさん
そ、それは、ロマンティックだ!!!
自分の名前の上に、好きな人の名前が!直筆!
思い返してみても、自分の人生にそんなことが起きたことはありません。
高1のときに教室で使っていた椅子が高3でまた自分の椅子にめぐってきたことぐらいです・・。
あと、クリスマスのプレゼント交換で、自分の用意したやつがまわってきたときは、ロマンを奪われました。

もじゃこは、今ごろストパーなのかもしれない!そんな気がする!
ロマンスに過剰反応するって言う意味では、どちらも結局はロマンスを信じていて、定義が違うだけなんじゃないかと思うんですよね。
一生分かり合えないロマンティスト同士。
Commented by azdrum at 2007-11-26 21:16
>kasumixさん
実はkasumixさんとも、勝手にこっそり同盟を結んでおりました。
確かに。ロマンを求める心で、人は豊かになるし、力を持てるんですよね。
ロマンがあったからこそ、科学は発達したし、歴史は解明されてきた。
ロマンティストたちの強い気持ちが、どれだけ未来を作ってきたか、と思うと、ちっこいロマンひとつでもあっためていかなきゃと思います。
世界平和とか宇宙生活に貢献できるほどではないにしろ、自分自身とまわりの誰の心がわずかでも豊かになるように!
Commented by kasumix at 2007-11-27 02:20
同盟を結んでくれていたなんて! 感激です。
ありがとうございます!!
いつも心にロマン……でありたいものですね
Commented by azdrum at 2007-11-27 19:23
>kasumixさん
勝手に結んですんません。
だってだって!ロマンを糧に生きている同士じゃないですか。
ロマンの力はすごいですよね。
Commented by tiki-tiki2005 at 2007-11-28 13:13
azさんの書く文章が、ナゼかナゼか、いつもとても切なくてあたくしの心にビンビンと響いていたんだけど、あたくしもろまんちっく同盟にひっそりと入れてもらえますか!?
らもさんは、あたくしにとってはず~っとず~っと大好きな人です。彼の書くろまんちっくな文章が大好きでした。
そして、azさんのろまんちっくっぷりを透かしてみると、らもさんのろまんちっくな部分が見えてきました。
azさんがらもさんのコトを書いてるのを見て、なんだか今、すんごい嬉しいです。
Commented by azdrum at 2007-11-28 19:00
>tiki-tikiさん
なんかわたしのほうがtiki-tikiさんのコメントを読んでじわっと涙ぐんでしまいました。
tiki-tikiさんの想う、らもさんのことを思うと。
シャイで、ロマンティストで、頑固で、優しい。
tiki-tikiさんもシャイでユニークで、優しい、それがわたしにはすごくよくわかります。
そして、ろまんてぃっく同盟、是非是非、ひっそりじゃなくて、堂々と加盟してくだされ!
tiki-tikiさんのロマン魂にも実はすごく憧れていました。


暮らし、ひとびと、食べ物、映画、この優先順位で日々を送り、その日記を書く。カテゴリは増やしません!太鼓の音には耳をすませ!                                 


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