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SOMEWHERE

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11歳の少女はこんなに美しくて、たまにかける眼鏡も似合うし、スケートも滑れるし、朝のエッグ・ベネディクトは完璧に作れるし、ギタ-・ヒーローも上手い。
すべてがあるのに、何も選べないというのは、時々すごく辛いんだろうな。
大人だってそうだ。
フェラーリを持っていても、明日の予定を覚えないでよくても、美女と好きなときにベッド・インできても、何を選んでいいのかわからない。いつも大事なものが残らない。
それは、何も選べないことよりも、もしかして悲しいと思う。

なんにも確かなものを持たないでいられる11の女の子よりも、今では四十もつれのどうしようもない中年男の気持ちのほうがずっと理解できるようになってしまったんだなあ。
押しが弱くて、滑稽で、時々挙動不審なジョニー・マルコ。
うーん、わかるよ、よく。そんでもって嫌いじゃないよ、そういうとこ。ぜんぜん。

ヴァージン・スーサイズも、ロスト・イン・トランスレーションも、マリー・アントワネットも、そしてこのSOMEWHEREも、主人公たちはみんなどこか浮いている。
本当は浮いてないかもしれない。でも浮いてる、遠い、って感じちゃうんだと思う。
それが辛いんでも悲しいんでもなく、やり過ごすことに慣れている彼らは、ちょっとぐらい退屈でも、なんでもこなせる。
でもそれってやっぱり寂しいよね、実際。
その中で、SOMEWHEREのジョニーはもっとも勇敢だったと思う。
そういう寂しさを自分でちゃんと引っ張りだしたから。
スパゲッティーをゆですぎたところ、切なかった。でもがんばった!
元妻に電話するんだけど、あれ偉いなと思った。
情けない気持ちを実際に言葉にするのも、さらに誰かにそれを言うのも、本当に勇気がいる。
他の主人公たちは、そこまでいけなかったと思う。
マリー・アントワネットも勇敢だったけど、女性のあの覚悟、あれはまた別の次元のすごさだもんね。

ソフィア・コッポラは懐かしさをきちんと映像にできる人だと思う。
実際の思い出と、憧れの風景を合わせたものを残してくれる。
70年代のアメリカ、8年前のTOKYO、フランス革命のパリ、ハリウッドの伝説のホテル、どれを知っていても知らなくても、懐かしい。
なんでって、たぶん、誰しも、孤独だったことがあると思うから。
孤独かどうかわからなくても、うまく世界となじんでない気がして、ざわざわした気持ちになったことはきっとあると思う。
どんなささいな場面でも。
修学旅行のバス、寝すぎた休日の午後、朝帰りの道、国際線のターミナル、多くの場所で、わたしたちは孤独を思い出す。
シャワーを浴びたとたんそれがフラッシュバックすることがあるみたいに、ソフィア・コッポラの映画にもそういう瞬間がたくさんあって(むしろそれの連続)、それが収縮する時はいつもと違ってちょっとだけいい予感がする。

この監督といえば、音楽が抜群だというのがもはや定説になっているが、今回もそうなんだろう。
映像にしろ音楽にしろ、メランコリックで美し過ぎて、こう毎回同じようなテイストで押されるとちょっと食傷気味になりはするものの、ホテルで双子がポールダンスをするときに、foo fightersの曲が流れるんだけど、音の出し方なんか(ラジカセっていう小道具も!)やっぱりよくて、もういいよーと思っても、うわっ!ってなるのは止められないし、というか、わたしにとって映画をみるというのはそういうことなんだと思った。それとも世代かな?
しょっぱな、フェラーリのエンジンが冷めていく音や、キー挿しっぱなしのアラートがなり続けていたりするのもかっこよかった。それで夢中になったから。
どうでもいいところでは、クレオのスーツケースのキャスターが、まわるとキラキラするやつだったのがツボだった!あれかわいいなー。(でもこの感情も11の少女とはほど遠いなーって思う。むしろ11の少女へのジェラシーなのかも。)

この監督の作品のファンだったけど、この映画を観るまで本当に良さを分かっていなかった気がする。
ガーリー・カルチャーのアイコンだって言われているけど、ソフィア・コッポラはほんとはマッチョなんだと思った。
じゃなきゃこんなにしつこい映画は創れないよ。頑固であることは素晴らしい。

SOMEWHERE
監督:ソフィア・コッポラ
出演:スティーブン・ドーフ エル・ファニング



SOMEWHEREといえば。
わたしはこの映画を観ている間に、結婚指輪がSOMEWHEREに。
手に朝のメイクがついている気がして、トイレで念入りに手を洗ったことは記憶している。
外した記憶ないんだけど、でも外したんだろうね。外したんだろうよ。
映画が終わってから、してないなあと気がついて戻ってみたけれど、そこにはなかった。
でもさ、あんな傷だらけで、名前の入ったラブリング、誰ももって行かないと思うんだよ。
何度も確かめたけど、どこにもなかった。
いやどこかにはあるんだけど。わたしの手元にないだけで。
ここではないどこかに今もあるわたしの結婚指輪よ、今までありがとう。

あまりの出来事に自分の胸にしまっておくことができなくて友達に打ち明けたら「厄が落ちたと思えばいいよ」とか「大事ななくしものは身代わりになってくれたってよく言うじゃん」とか「もう猛反省したんだから、切り替えて新しくお買い物しようよ」とか「この際、ふたりで結婚指輪買い替えるっていうのはどう?」など繊細かつ大胆な励ましをもらい、だいぶん立ち直ってきた。

それで「でも値上がりしとるんよねー。」と言ったら、「そういう問題じゃない!お金で買えるものじゃないんだから!」と、母にぴしゃりと叱られた。
まあそうなんだよね。一体わたしは何に悲しんでいるのか?
結婚指輪っていうか、ほんとに気に入ってたんだよ。お金で買えるっちゃ買えるんだけどね・・。
なんて、ひどいよね、自分。
by azdrum | 2011-05-21 20:59 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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