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Pink twilight



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どっかでもらってきたしそジュースは、濃すぎるし甘すぎるけど、今年は暑かったからソーダをたっぷりといれてよく飲んだ。
面倒で大掛かりな家事をするときは、そこにちょっぴりの(たまに充分の)ウォッカをいれたりもした。
窓を開け放ち、湿度と熱気にむせびながら、シーツにアイロンをかけたり古紙を束ねたり、窓ふきや換気扇掃除などをするには、氷の入った大きなグラスが必要だよね。

とても好きな短編小説の中に、暑い夏、庭の芝を刈る仕事を終えた主人公が、依頼人であるその家の女主人に、とある部屋に招き入れられ、そこで一緒にウォッカ・トニックを飲むというシーンがあって、その家のなかに充満している空気を想像するたびに、ウォッカ・トニックが飲みたくなる。
ソーダじゃなくてトニック・ウォーターなのもぐっとくる。

わたしが興味をかきたてられるのは、家の女主人のほう。
死んだ夫が心を込めて手入れをしていた素敵な庭つきの家で、女主人はたったひとりで昼間からウィスキーを飲み(もちろんオン・ザ・ロック!)、煙草を探し、古いキッチンでサンドイッチをつくる。
「太陽に弱い」と小説の中で彼女は言っているけれど(だから自分では芝を刈ることができない)、わたしの中の彼女は腕の裏から爪先まできれいに日に焼けている。それはもう真っ黒にね。

その部屋で、女主人は常に話の核心には触れず、含んだような表情で2杯目の濃いウォッカ・トニックを飲みながら、誰かの答えを待っている。
誰かの答えを待っている!
シンパシーを感じるのは、わたしの中にある物語にも、彼女と同じように、何か分からないものを待ち続けている人々がいるからかもしれない。

ぼんやり思い出すのは、「キルトに綴る愛」の中で起きるあの小さな嵐のことだ。
いつかあの風が小説の女主人まで届くといい。
わたしの中の物語の彼らにも、そしてもちろん、わたし自身にも。

ウォッカ・トニックの夏はすでに遠くなり、いくら昼間に家事をしてもぴったりくるものがない。
だってなんかもう、夏バテ解消のために朝から青汁飲んでるもんね。
秋口は、うこん茶にラムを入れるっていうのはあれだろうかね、意外といけると思うんだけど。
by azdrum | 2009-09-04 20:22 | 暮らし | Trackback | Comments(6)
Commented by ジュリア at 2009-09-04 21:14 x
写真はしそジュース?綺麗な色!

>そこにちょっぴりの(たまに充分の)ウォッカをいれたりもした。

のところまで読んで「午後の最後の芝生」のことを思い出したら、続きがズバリ、その話で嬉しくなったよ。
夏になると、必ず読みたくなる。
私も面倒で気の進まない、嫌な作業の前には、自分にガソリン(笑)投入したりするよ。夏場はすぐに汗になって流れちゃうよね。
初めて「午後の~」を読んだ時は、家を出て行った娘より年下だったのに、今は女主人の歳のほうが近くなってきたよ。
女主人の抱えている痛みが、リアルに感じられるようになってきた。
Commented by azdrum at 2009-09-04 23:46
>ジュリアさーん!
ジュリアさんなら絶対にわかってくれると思ってた!!
最初からあの庭と、あの娘の部屋のことをずーっと考えながら書いたから。

>女主人の抱えている痛みが、リアルに感じられるようになってきた。

ほんとうに。ほんとうにそう。
昔は、女主人の過去を考えたりしてたんだけど、今は彼女の未来を祈ってしまう。
どうか救われますようにって思いながら読んでしまう。

主人公がウォッカ・トニックに口をつけたときの「全然薄くなかった」ってところがすごく好きです。
サンドイッチ、もっと美味しいだろう!!美味しくなきゃ!って思うんだけど。
主人公の反応の薄さが物足りない!

しそジュース、きれいですよね。
原液はもっと濃いんですよ。これは、ほんとにソーダとウォッカ入りで氷も溶けてきたから。

Commented by maco at 2009-09-05 08:32 x
そうか、私は昔からお酒をそんなに飲まないから
小説や映画に出てくる、お酒に関するシーンに鈍感なんだってことに気がついた。そのお酒の場面が、物語にもたらす雰囲気を読み逃すというか.....ライ麦のドライ・マティーニしかり。

今年のある夏の朝に、家のマンションのゴミ置き場に不要品を出しに行ったら
『中国行きのスロウ・ボート』とか
『螢・納屋を焼く・その他の短編』が捨ててあって
(しかもすごく読み込まれた感じの単行本)
ふと「午後の最後の芝生」を思い出したよ。
そうかウォッカ・トニックを飲んでたんだ。

大掛かりな家事の前には勢いがいるよねえ。のりPは「掃除や洗濯」の前にブツを使ってたという記事を読んで、なんだかブツの代わりはなかったのかと悲しくなった。

それにしても、azdrumさんはシーツにもアイロンかけるんだねー。えらーい。見習おっと。
Commented by azdrum at 2009-09-05 10:33
>maco
それはやっぱり例の「のる」ところの違いだと思う。
だってわたし、お酒飲めないときから、ウォッカ・トニックに過剰反応してたから!
わたしにとっての大人の象徴がお酒なんだよ、きっと。
だから、わたしはそうお酒は強くないのに、いろんな場所に必要としてしまうんだろう。
それは結局、まだ大人になりきれてないってことでもあるよね。

大掛かりな家事って結構好きなんだー。やるまでが長いけど。
より「らしい」シチュエーションにするには、ちょっとのお酒があれば完璧。
(ちなみにシーツはたまたま乾燥機にかけてしわくちゃになったから。普段はかけないよ!)

最近の傾向として、ブツがもうアロマテラピーとかユンケルぐらいの感じになってるから怖いねえ。
やめられないんだなーって、腹立たしく思うよ。
macoがもってたあのホメオパシーの粒とすり替えてやりたいわ。
Commented by kasumix at 2009-09-13 22:49
大ぶりのグラスに氷は、夏の必需品です!
家事でたっぷり汗を流したあと、窓辺からギラつく太陽をながめながら、ゴクっとグラスの中の液体を飲み干す…
いいですよね。
あたくしも何かを待ち続けているのですが、その風がこちらにもそよりと吹いてくれるといいな
Commented by azdrum at 2009-09-14 08:21
>kasumixさん
もー!ほんっとにそうなんです、窓辺からギラつく太陽をながめながら、ひと息つくのがいいんですよね。
窓から見える景色が、強すぎる日差しのせいで、真っ白なんですよ。
アスファルトも、どっかの社宅も、ぜんぶ。
わたしの問題は、何を待っているのか自分でも分からないことなんですが、あの風がふいたらそれが何であれ、どうでもよくなる気がします。
kasumixさんにも本物の風が吹くように祈っています。


暮らし、ひとびと、食べ物、映画、この優先順位で日々を送り、その日記を書く。カテゴリは増やしません!太鼓の音には耳をすませ!                                 


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